Atrophic Gastritis

萎縮性胃炎

胃の粘膜の変化を知り、これからの検査につなげる。

「胃の粘膜が薄くなっている」「萎縮性胃炎がある」と言われた方へ。萎縮の広がりやピロリ菌感染の有無を確認し、胃がんのリスクに合わせて治療と経過観察を考えます。

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食道・胃の位置を表すシンプルな概念図
位置や仕組みの理解を助ける概念図です。

萎縮性胃炎とは

萎縮性胃炎は、長く続く炎症などによって、胃液をつくる腺を含む胃の粘膜が減少した状態です。「萎縮」といっても胃全体が小さく縮むという意味ではありません。胃カメラでは粘膜の色、透けて見える血管、ひだの状態などから評価します。

胃の痛みやもたれを伴うことはありますが、症状がない方も少なくありません。症状の強さだけで萎縮の程度や胃がんのリスクは判断できないため、健診で指摘された場合も、結果を確認して今後の検査について相談することが大切です。

原因はピロリ菌だけ?

日本では、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染に伴う慢性胃炎が主な原因です。現在も感染している場合だけでなく、過去の感染による粘膜の変化が、除菌に成功した後も残っている場合があります。検査が陰性でも、過去の除菌歴や内視鏡所見を合わせて判断します。

一方、免疫の働きによって胃の細胞が障害される「自己免疫性胃炎」もあります。胃の上部・体部を中心に萎縮し、鉄やビタミンB12の不足、貧血などが見つかることがあります。萎縮の分布が典型的でない場合や原因がはっきりしない場合には、血液検査や組織検査、専門施設との連携を検討します。

分類① 木村・竹本分類:萎縮の広がりを見る

日本の胃カメラでよく用いられるのが「木村・竹本分類」です。萎縮した粘膜と、それ以外の粘膜との境界が胃のどこまで広がっているかを見て、C型とO型に分けます。結果用紙のCやOは、がんの病期を表す記号ではありません。

C型(閉鎖型:C-1・C-2・C-3)は、萎縮の境界が主に胃の小彎側、つまり内側のカーブの側にとどまるタイプです。C-1からC-3へ、胃の出口に近い側から上方へ広がる程度を区分します。

O型(開放型:O-1・O-2・O-3)は、その境界が小彎側で閉じず、胃の上部や外側へさらに広がるタイプです。一般にO-1からO-3へ広い範囲の萎縮を示します。萎縮を認めない状態をC-0と記載する場合もあります。

この分類は萎縮の「範囲」を伝えるためのもので、単独で胃がんの有無や発症確率を決めるものではありません。除菌前後の状態や、萎縮以外の所見も含めて評価します。

分類② 胃炎の京都分類:所見を組み合わせる

「胃炎の京都分類」は、萎縮だけでなく、腸上皮化生、ひだの腫大、鳥肌のような粘膜、びまん性の赤みなどの内視鏡所見を整理する考え方です。ピロリ菌の感染状態や胃がんリスクを考える際に役立ちます。

腸上皮化生とは、胃の粘膜の一部が腸の粘膜に似た性質へ変わることです。萎縮と一緒に見られることがありますが、それ自体が胃がんと同じという意味ではありません。必要に応じて粘膜の一部を採取する生検で確認します。病理検査の結果と、内視鏡で見た分類は区別して説明します。

胃がんとの関係と、除菌後の注意点

萎縮が広い方や腸上皮化生がある方は、胃がんの発生に注意が必要です。ただし、萎縮性胃炎のある方全員が胃がんになるわけではありません。年齢、家族の胃がん歴、過去の胃がん治療歴なども含めて考えます。

ピロリ菌の除菌は胃がんのリスクを下げることが期待されますが、リスクをゼロにはできません。除菌後に炎症が改善しても、萎縮や腸上皮化生などの変化が残る場合があります。「除菌できたので、今後の胃カメラは不要」と自己判断しないことが大切です。

除菌後の胃がんリスクは、どのくらい残る?

日本の単施設研究では、除菌に成功した2,737人を平均7.1年、最長21.4年追跡し、68人に胃がんが見つかりました。論文で報告された年間発生率は全体で0.35%で、除菌時の萎縮の程度によって次の違いがありました。

除菌時の萎縮と、除菌後の年間発生率
萎縮の程度年間発生率
軽度C-1・C-20.15%/年
中等度C-3・O-10.29%/年
高度O-2・O-30.67%/年

出典:Takeら、J Gastroenterol(2020)↗。除菌時の木村・竹本分類による区分。

数字はTakeら(2020)の研究集団における年間発生率です。対象は男性や胃・十二指腸潰瘍の患者さんが多く、胃がん治療歴のある方は除外されています。すべての除菌後の方や、ご自身の発症確率にそのまま当てはまるものではありません。年率を単純に10倍して10年間のリスクとは表せません。

除菌から10年以上たっても胃がんは発生しています。「何年も問題がなかったから、もう検査は不要」とは考えず、長期的に胃の状態を確認することが大切です。

当院の方針:除菌後も、原則として年1回の胃カメラを

当院では、萎縮性胃炎のある方に、除菌成功後も原則として年1回の胃カメラをおすすめしています。症状がなくても検査を続け、胃がんなどの変化を早く見つけることを目指します。除菌判定が陰性になった時点で通院・検査を終わりにせず、次回の胃カメラの予定を確認してください。

年1回は当院の経過観察の基本方針です。萎縮や腸上皮化生の程度、胃がんの治療歴、前回の所見によっては、より短い間隔で確認します。年齢や全身状態、検査の負担も踏まえ、実際の日程は担当医と決めます。一般の胃がん検診と、萎縮性胃炎の経過観察は目的が異なります。

年1回の検査ですべての胃がんを防いだり見逃さなかったりすることを保証するものではありません。黒い便や体重減少などがあれば、予定日を待たずに受診してください。

検査と治療はどう進める?

まず、以前の胃カメラやピロリ菌検査、除菌判定の結果を確認します。必要に応じて胃カメラで萎縮の広がりと、潰瘍や腫瘍を疑う変化がないかを観察します。感染検査は服薬や除菌歴の影響を受けるため、使用中のお薬もお知らせください。

現在のピロリ菌感染が確認された場合は、適応を確認して除菌治療を検討します。感染していない方へ、萎縮があるという理由だけで除菌薬を処方するものではありません。薬の組み合わせ、飲み方、除菌判定は「ピロリ菌感染症・除菌治療」のページで詳しく説明しています。

萎縮した粘膜を必ず元どおりにする薬があるわけではありません。胃痛や胃もたれなどは別の原因も確認し、必要に応じて治療します。自己免疫性胃炎に伴う栄養素の不足や貧血があれば、その評価と補充も検討します。胃がんを疑う所見があれば、精密検査・治療ができる医療機関へつなぎます。

日常生活と、早めに相談したい症状

禁煙し、塩分の多い食事や過度の飲酒を控え、偏りの少ない食生活を心がけます。特定の食品やサプリメントだけで、萎縮や胃がんリスクがなくなるとはいえません。症状が落ち着いていても、相談した検査予定を続けましょう。

黒いタール状の便、吐血、意図しない体重減少、食べ物のつかえ、続く嘔吐、貧血を指摘された場合は、予定の検査日を待たずに相談してください。吐血にふらつきや冷や汗を伴うなど、急に具合が悪くなったときは救急受診が必要です。

当院でのご相談

当院では消化器内視鏡専門医が在籍し、胃カメラの所見、ピロリ菌の感染・除菌歴、症状を合わせて、検査と経過観察をご案内します。受診時は健診結果、過去の内視鏡写真や報告書、除菌判定の結果、お薬手帳をお持ちください。結果用紙の分類が気になる場合も、その意味と次の検査の目安を一緒に確認します。

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診察・検査の流れ

  1. 01

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    症状の経過、健診や内視鏡の結果、内服薬とアレルギーを確認します。

  2. 02

    必要な検査を相談

    検査の目的と準備をご説明し、適切な方法と日程を決めます。

  3. 03

    結果と治療を説明

    検査結果をもとに治療を選び、必要に応じて専門施設と連携します。

  4. 04

    次の確認へ

    症状の変化と薬の効果を確認し、経過観察や再検査の予定を決めます。

このページの参考情報

内容確認:2026年10月。治療・検査は診察で個別に判断します。

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