EGPAとは
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は、好酸球という白血球が増え、血管やさまざまな臓器に炎症が起こる疾患です。英語名はeosinophilic granulomatosis with polyangiitisで、頭文字からEGPAと呼びます。以前はチャーグ・ストラウス症候群などの名称が使われていました。気管支喘息や鼻・副鼻腔の病気と関係が深い一方、肺だけにとどまらず、神経、皮膚、心臓、腎臓、消化管などが障害されることがあります。[1]
EGPAは膠原病・血管炎の分野で診療する病気です。アレルギーや喘息がある方すべてに起こるわけではなく、好酸球が多いという血液検査の結果だけでも診断できません。症状の経過、診察、血液や尿、画像などを合わせ、似た病気を除外しながら判断します。人からうつる病気ではありません。[1][2]
喘息の経過中に発見されることがあります
EGPAでは、喘息や鼻副鼻腔炎が先にあり、その経過中に好酸球の増加や全身の症状が現れて発見されることがあります。吸入薬だけでは説明できない体調の変化が加わったときには、呼吸器以外の臓器にも目を向けることが大切です。喘息の診療で過去の好酸球数や治療の経過を振り返ることが、評価の手がかりになります。[3]
注意したいのは、手足のしびれや痛み、片側の足首が上がりにくい、握力が落ちるなどの神経の症状です。皮膚の紫色の斑点、続く発熱、体重減少、強い腹痛などが現れる場合もあります。胸の痛み、息切れ、動悸には心臓の病変が関係することもあります。「いつもの喘息」「年齢のせい」と考えて、全身の症状を放置しないようにしましょう。[1][3]
当院では、喘息の経過中に見つかるEGPAにも呼吸器内科で力を入れています。呼吸器内科と膠原病の専門医が連携し、喘息・鼻副鼻腔の症状だけでなく、血管炎による全身の病変を評価して治療を考えます。重い臓器障害や入院治療が必要な場合には、専門医療機関と連携して対応します。
どのような検査を行うか
血液検査では好酸球数や炎症反応、腎機能などを確認し、ANCAという自己抗体も必要に応じて調べます。EGPAはANCA関連血管炎に含まれますが、ANCAが陰性の患者さんもいます。陰性だからEGPAではない、陽性だから必ずEGPAという判断はできません。治療中のステロイドなどによって好酸球数が変わるため、治療前の記録も役立ちます。[2][4]
尿検査や胸部画像、呼吸機能、心電図・心エコーなどは、症状と臓器障害の疑いに応じて選びます。しびれや筋力低下がある場合は神経の検査、皮疹などがある場合は組織を採って調べる生検を検討することもあります。薬剤の影響、寄生虫感染、ほかの好酸球増多を起こす病気なども考慮します。研究用の分類基準の点数だけで、患者さん自身が診断するものではありません。[2][4]
重症度に応じた治療
国内のANCA関連血管炎診療ガイドライン2023と国際的な治療推奨を踏まえ、炎症を抑える「寛解導入」と、再燃を防ぐ「寛解維持」を考えます。治療の強さは、好酸球の数だけでなく、どの臓器が障害されているか、命や臓器の機能を脅かす病変があるかで変わります。[4][5]
副腎皮質ステロイド薬が治療の基本となります。心臓、腎臓、神経、消化管などに重い病変がある場合には、入院での評価や、シクロホスファミドなどの免疫抑制薬との併用が必要になることがあります。国際推奨では状況に応じたリツキシマブの検討も示されていますが、国内の承認・保険適用を別に確認して治療を選択します。新しい注射薬だけで重い急性血管炎に対応できるとは限りません。[5][6]
ヌーカラなどの生物学的製剤
ヌーカラ(一般名:メポリズマブ)は、好酸球に関わるIL-5という物質の働きを抑える薬です。国内では、既存治療で効果不十分なEGPAに使用でき、適切な全身性ステロイド治療でも十分な効果が得られない場合に上乗せする位置づけです。成人EGPAの承認用量は1回300mgを4週間ごとに皮下注射します。成人喘息での通常用量100mgとは異なるため、喘息の投与量をそのままEGPAの治療量と考えないことが大切です。[7]
ヌーカラには、病気が落ち着く期間を延ばし、再燃やステロイドの負担を減らす効果が期待されます。2017年のMIRRA試験では、再燃・難治性EGPAの成人136人を対象に、標準治療にヌーカラまたはプラセボを加えて52週間比較し、ヌーカラ群で寛解の期間や再燃などの改善が認められました。ただし全員が寛解するわけではなく、生命や臓器を脅かす活動性病変への効果を、この試験だけで保証することはできません。[8][9]
現在は、ファセンラ(一般名:ベンラリズマブ)も国内で既存治療に効果不十分なEGPAの選択肢になっています。IL-5の受容体を標的にする薬で、成人EGPAでは1回30mgを4週間隔で皮下注射します。喘息で使う場合とは投与間隔が異なるため、病名に応じた用法を確認します。薬の量が違う二つの薬を、mgの数字だけで強さや優劣として比較することはできません。[10]
2024年のMANDARA試験では、再燃・難治性EGPAの成人140人に標準治療を続けながらファセンラとヌーカラを52週間投与し、36週と48週の両方で寛解していた割合はそれぞれ59%、56%でした。この試験はファセンラの非劣性を示したもので、ヌーカラより優れていると証明した結果ではありません。どちらを使うかは、病変、これまでの治療、効果、安全性などを相談して決めます。[11]
これらの薬は、今起きている喘息発作をすぐに止める救急薬ではありません。治療開始後も、吸入薬やステロイドを自己判断で中断しないでください。注射後の強いじんましんや呼吸困難など、アレルギー反応が疑われる場合は速やかな対応が必要です。適応疾患の治療に精通した医師のもとで、効果と副作用を確認しながら継続します。[7][10]
継続管理と受診の目安
治療中は喘息症状だけでなく、しびれ、筋力、皮疹、腹部症状、尿の異常などを確認します。好酸球が下がっていても、臓器の状態や症状の評価は必要です。炎症が落ち着いた後に残る神経障害と、血管炎が再び活動している状態では対応が異なるため、新しい症状や変化をお伝えください。症状と採血の経過を合わせて判断し、ステロイドの減量も慎重に進めます。[2][9]
感染症、骨粗鬆症、血糖や血圧の上昇など、治療に伴う影響にも注意します。病状と使用薬に応じて感染予防を検討し、残る神経症状などにはリハビリも組み合わせます。指定難病の医療費助成は、診断と重症度、医療費などの条件によって対象が異なります。該当する可能性がある場合は申請について相談してください。[1][6]
喘息のある方で、新しいしびれや脱力、紫斑、原因の分からない発熱・腹痛が出た場合は早めに受診してください。お薬手帳と、過去の好酸球数などが分かる検査結果をお持ちいただくと役立ちます。強い胸痛や呼吸困難、急な麻痺、意識の異常、消化管出血が疑われる場合は、通常のWEB予約を待たず救急医療へ相談してください。
参考資料
- 難病情報センター:EGPA 診断・治療指針
- EGPA診断・管理の国際ガイドライン2023
- PMDA:ファセンラEGPA適応追加の審査資料2024
- ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023・改訂表:Minds
- EULAR:ANCA関連血管炎治療推奨2022更新(2024年誌面掲載)
- ACR/Vasculitis Foundation:ANCA関連血管炎ガイドライン2021
- PMDA:ヌーカラ最新電子添文
- MIRRA試験:Mepolizumab or Placebo for EGPA, 2017
- 難病情報センター:EGPA よくある質問
- PMDA:ファセンラ電子添文・2026年5月改訂
- MANDARA試験:Benralizumab versus Mepolizumab for EGPA, 2024





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