喘息では、空気の通り道が狭くなります。
喘息は、気管支に炎症が続き、刺激に敏感になる病気です。気道の壁がむくみ、周囲の筋肉が縮み、粘液が増えることで空気が通りにくくなります。せき、息苦しさ、胸の圧迫感、息を吐くときのゼーゼー・ヒューヒューという音が、強くなったり軽くなったりします。
アレルギーが関係する方もいますが、喘息の原因はそれだけではありません。大人になってから発症することもあります。症状が軽い時期にも炎症が残ることがあり、「苦しいときだけ対処する」方法では十分に管理できない場合があります。
気管支を輪切りにすると
肺と気管支通常の気管支喘息で狭くなった気管支仕組みを簡略化した模式図です。実際の形や変化の程度には個人差があります。
せきの出る時間や、きっかけも手がかりです。
夜間・早朝にせきが出る、かぜをひくと長引く、冷たい空気や運動で息苦しくなるなど、症状のパターンを伺います。ダニ・花粉などのアレルゲン、煙、香り、仕事で扱う物質が悪化に関わることもあります。すべてを避けるのではなく、ご自身と関係する要因を整理します。
- 夜中にせきや息苦しさで目が覚める
- 階段・運動・会話などでせきが出る
- 症状のない日と、強い日を繰り返す
- 発作時の薬を使う回数が増えている
ゼーゼーという音がなく、せきが中心になる「咳喘息」もあります。一方、COPD、鼻・副鼻腔の病気、胃食道逆流、心不全などでも似た症状が出ます。症状だけで決めつけず、必要な検査を組み合わせます。
長引くせきの原因と鑑別を見る →喘息の検査:3つの視点で確認します。
喘息の診断では、症状が変動することと、空気の通りやすさを確認します。さらに炎症の特徴を調べることで、治療薬の選択や効き方を考えます。一つの検査値だけで診断を決めず、症状・薬・検査を合わせて読み解きます。
息の「通りやすさ」をみる
呼吸機能検査(スパイロメトリー)
大きく吸ってから、できるだけ速く・しっかり息を吐きます。最初の1秒間に吐ける量(1秒量)などを測り、気道の狭さを評価します。必要に応じて気管支を広げる薬の前後を比べ、改善するか確認します。
方法を簡略化したイメージ図です。実際の機器とは異なります。症状が落ち着いている時期は正常になることもあります。検査時の体調や吸入薬を使った時刻をお伝えください。薬を止める必要があるかは検査前に確認し、自己判断で中止しないでください。
息に含まれる「炎症の手がかり」をみる
呼気NO(FeNO)検査
一定の速さでゆっくり息を吐き、呼気中の一酸化窒素を測ります。好酸球などが関わるタイプ2炎症を考える補助情報で、吸入ステロイドの効き方や治療の経過をみる際にも役立ちます。
方法を簡略化したイメージ図です。実際の機器とは異なります。高い数値だけで喘息とは決まりません。鼻炎、喫煙、すでに使用している吸入薬などの影響も考慮します。低い値でも喘息を否定できないため、呼吸機能検査とは別の情報として組み合わせます。
炎症とアレルギーの「特徴」をみる
血液検査:好酸球・IgE
好酸球は白血球の一種です。好酸球数、総IgE、原因として考えられるものへの特異的IgEなどを、病歴に応じて調べます。生物学的製剤を検討するときにも重要ですが、数値は時期やステロイドの使用で変化することがあります。
方法を簡略化したイメージ図です。実際の機器とは異なります。アレルギー検査の陽性は、必ずその物質で症状が出るという意味ではありません。生活や仕事での接触と症状の関係を確認します。レントゲンや必要に応じたCTでは、肺炎・COPD・ほかの病気が隠れていないかを調べます。胸部画像だけで喘息を診断するものではありません。
治療の中心は、気道の炎症を抑えること。
成人の喘息では、吸入ステロイド薬を含む治療を基本として、症状や発作の状況に応じて薬を選びます。必要に応じて気管支を広げる薬などを組み合わせます。吸入薬は気道に薬を届ける方法で、種類や吸入器によって使い方が異なります。
普段の炎症を抑える使い方と、症状が出たときの使い方を区別して確認しましょう。処方によっては一つの吸入器が両方の役割を担いますが、すべての吸入薬を発作時に追加してよいわけではありません。薬の名前、回数、追加できる上限は、ご自身の処方に沿って確認してください。
目標は、眠る・働く・運動するといった毎日の生活を保ち、急な悪化を減らすことです。調子がよくなった後も自己判断で中止せず、安定した期間や検査結果をもとに医師と治療の調整を相談します。
吸入薬は、実物を使って一緒に確認します。
薬が合っていても、うまく吸えていなければ十分な効果が得られません。受診時には使用中の吸入器やお薬手帳をお持ちください。残りの回数、準備の操作、口の当て方、吸う速さ、吸入後の手順を確認できます。
器具に合う吸い方
粉末タイプと噴霧タイプでは、必要な吸い方やタイミングが異なります。全員に共通の吸入手順として覚えるのではなく、処方された器具で練習します。
困りごとも相談
声がかすれる、口の違和感、操作が難しい、続けにくいなども治療を調整する手がかりです。吸入ステロイド使用後のうがい・口すすぎも、製品の説明に沿って行います。
「吸えているつもりでも不安」「忙しくて忘れる」といったことも遠慮なくお伝えください。生活の中で続けられる方法を、医師・看護師・薬剤師と考えます。
吸入を続けても、発作を繰り返すとき。
「薬を使っているのに夜中に目が覚める」「発作で飲み薬のステロイドを何度も使う」「救急受診や入院を繰り返す」。こうした場合は、今の治療が十分に届いているかを見直す機会です。
適切な量の吸入ステロイド薬と気管支拡張薬などを、正しい方法で継続してもコントロールが難しい方では、重症喘息として治療を考えます。吸入量を増やしにくい理由や副作用も含めて、専門医と上乗せ治療を相談します。
生物学的製剤とは?
喘息を起こす炎症には、さまざまな経路があります。生物学的製剤は、その中の特定の物質や受け手を狙って作用する抗体の薬です。皮下注射で用い、既存の治療に追加して、発作や日常の症状を減らすことを目指します。
すべての喘息に同じ注射が合うわけではありません。アレルギーの関与、血中好酸球、FeNO、これまでの発作、鼻・皮膚などの合併症を確認して選びます。「新しい薬だからよい」ではなく、炎症の特徴と生活に合っているかを考えます。
主な5種類と、選び方の違い
以下は成人の喘息で用いられる主な薬です。名称と作用点を知るための案内で、ご自身で薬を選んだり間隔を変更したりするための表ではありません。対象年齢・用量・自己注射の条件などは薬剤ごとに異なります。
オマリズマブ
アレルギー反応に関わるIgEを標的にします。通年性の吸入アレルゲンへの反応などを確認し、投与前の総IgEと体重も用いて適応・量・間隔を判断します。
確認したい副作用
注射部位の反応や、まれな強いアレルギー反応に注意します。
メポリズマブ
好酸球の増加や生存に関わるIL-5を抑えます。好酸球が関わる重症喘息で、発作歴や血液検査などを踏まえて検討します。
確認したい副作用
注射部位の痛み・腫れ、頭痛、過敏反応などに注意します。
ベンラリズマブ
好酸球の表面にあるIL-5受容体αを標的にします。好酸球が関わる重症喘息で検討します。成人喘息では初回から3回は4週間隔、その後は8週間隔が基本です。
確認したい副作用
注射部位の反応、頭痛、過敏反応などに注意します。
デュピルマブ
IL-4受容体αを介して、IL-4とIL-13の働きを抑えます。好酸球やFeNO、発作歴などを参考にし、鼻茸やアトピー性皮膚炎などの合併症も踏まえて検討します。
確認したい副作用
注射部位の反応、結膜炎などの眼症状、好酸球の増加や関連症状などに注意します。
テゼペルマブ
気道の上皮から出るTSLPという、炎症の上流に関わる物質を抑えます。好酸球やアレルギーの有無だけでは選択肢が絞りにくい方を含め、重症喘息で適応を検討します。
確認したい副作用
注射部位の反応、咽頭の症状、関節痛、過敏反応などに注意します。
当院では、専門医が検査結果と治療経過を踏まえて、生物学的製剤を含む治療を相談します。導入できる薬剤や投与方法は個別に確認し、必要に応じて専門施設と連携します。
始める前・始めた後に確認すること
治療前には、この1年の発作回数、救急受診、入院、ステロイド内服の回数、仕事や睡眠への影響を振り返ります。目標を共有しておくと、治療後に何が改善したかを確認しやすくなります。
- 01
検査と生活から、薬を相談
好酸球・IgE・FeNOだけでなく、吸入の状況、併存症、妊娠の希望、注射への不安、通院できる間隔も伺います。
- 02
投与方法と、異変があったときの対応
皮下注射の方法、注射後の観察、次回の日程、緊急時の連絡先を確認します。自己注射は、薬剤の条件と医師の判断、十分な説明・練習を経て検討します。
- 03
数か月の経過で、複数の変化を評価
発作回数、夜間の症状、生活のしやすさ、呼吸機能、質問票(ACTなど)、ステロイドの負担を合わせて確認します。採血の数値が下がったことだけで、効果を判断しません。
- 04
継続・調整を、一緒に考える
反応が十分でなければ、診断や吸入の状態を再確認し、別の薬への変更などを検討します。よくなった場合も、薬の減量や中止は医師と相談して段階的に判断します。
発熱、これまでと違う息切れ、しびれ、目の痛みなど、新たな症状が出た場合も、使用している薬の名前を伝えてご相談ください。
費用と通院の負担も含めて相談
適応を満たす治療は保険診療の対象になりますが、薬剤費は高額になることがあります。使う薬と量、注射の間隔、負担割合、年齢・所得区分などで自己負担が変わるため、一律の金額ではご案内できません。
開始前に、診察・検査を含めた費用の目安と、高額療養費制度などを利用できるか確認します。加入している健康保険によって付加給付がある場合もあります。費用が心配なことも、治療を決める前にお伝えください。
通院が難しい場合も相談してください。自己注射の可否、保管と持ち運び、定期診察の頻度などを検討します。自宅で注射できる場合も、効果と副作用を確認する通院は必要です。
当院での相談と、診察前の準備。
当院では呼吸器専門医・喘息専門医が診療し、看護師や薬剤師と連携しながら治療を相談します。生物学的製剤を含む治療についても、状態と適応を確認します。
「いつ」「どんな場面で」「どのくらい続くか」と、夜間の症状、発作時の薬を使った回数をメモしていただくと、診察時に伝えやすくなります。以前の検査結果や、薬を使った後にどう変わったかもお知らせください。
強い発作では、予約日を待たないでください。
よくある質問
せきだけでも喘息の可能性はありますか?
あります。ただし、せきの原因にはいろいろな病気があります。症状の経過、呼吸機能、治療への反応などを合わせて判断します。
吸入ステロイドが心配です。
必要な量を気道に届け、発作を予防するための薬です。口の中のカビや声がれなどの副作用もあるため、吸入方法と使用後のケアを確認します。不安を理由に自己判断で中断せず相談してください。
運動はやめたほうがよいですか?
喘息が落ち着いていれば、体調に合う運動を続けることを目指します。運動時に症状が出る場合は治療の状態や予防策を確認します。強い症状があるときは無理をしないでください。
生物学的製剤を始めたら、吸入薬はいりませんか?
すぐに不要になるわけではありません。吸入ステロイドを含む基本の治療に追加して使います。症状が安定しても自己判断で減らさず、医師が発作の危険性などを確認して調整します。
注射をすれば、喘息は治りますか?
発作や症状を減らし、生活と治療の負担を軽くすることを目指す薬です。すべての方に同じ効果が出るわけではなく、完治を保証する治療ではありません。続ける必要性は経過を見て相談します。
Step by Step
診察・検査の流れ
- 01
症状を整理
せき・息苦しさが起きる時間、きっかけ、薬や生活への影響を伺います。
- 02
必要な検査
呼吸機能、呼気NO、画像などを症状に合わせて組み合わせます。
- 03
治療と吸入確認
薬の役割と操作、悪化時の対応を確認します。
- 04
経過を見直す
症状、発作、睡眠・活動への影響から治療を調整します。





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