Blood pressure

高血圧症

まずは、いつもの血圧を知ることから。

  • 自覚症状がないことも多い病気
  • 家庭血圧を記録して診察へ
  • 減塩と治療を、自分のペースで継続
内科の受診案内
高血圧症の概念を表すイラスト
仕組みを簡略化したイメージ図

高血圧症とは

血圧は、心臓から送り出された血液が血管の壁を押す圧力です。高い状態が続くと、血管や心臓、脳、腎臓に負担がかかります。高血圧は自覚症状が乏しいことも多く、「頭痛がないから大丈夫」「体調が良いから治療は不要」とは判断できません。脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎機能低下などを防ぐため、健診の値だけでなく日常の血圧を知ることが大切です。[1]

日本の高血圧の診断基準は、診察室では上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上です。家庭血圧では、上が135mmHg以上、または下が85mmHg以上が高血圧の目安です。上と下の両方が高い必要はありません。1回の測定だけで決めず、適切な条件で繰り返した記録をもとに医師が判断します。[2][3]

診察室の診断基準(上または下)
上:140mmHg以上
または
下:90mmHg以上
家庭の診断基準(上または下)
上:135mmHg以上
または
下:85mmHg以上
診察室の基本治療目標(両方)
上:130mmHg未満
かつ
下:80mmHg未満
家庭の基本治療目標(両方)
上:125mmHg未満
かつ
下:75mmHg未満

診断基準と治療目標は違います。2025年の日本のガイドラインでは、降圧治療の基本目標を診察室130/80mmHg未満、家庭125/75mmHg未満としています。これは「125/75以上なら全員が高血圧」という意味ではありません。年齢だけでなく、ふらつき、立ちくらみ、腎機能、持病、体の状態や薬の副作用を確認し、無理のない目標と下げ方を相談します。妊娠中などは別の配慮が必要です。[3][4]

家庭血圧を正しく測る

家庭血圧は、診察室で緊張して高くなる「白衣高血圧」や、診察室では正常でも家庭で高い「仮面高血圧」を見つける助けになります。血圧計は、精度が確認された上腕式を基本とし、腕に合うカフを使います。カフを使わない腕時計型などの値だけで、診断や薬の調整をしないでください。[5]

  • 朝は起床後1時間以内に、トイレを済ませ、朝食と朝の降圧薬を飲む前に測ります。測定のために薬の服用を長く遅らせないようにしましょう。
  • 夜は就寝前に測ります。入浴や飲酒で値が変わるため、必要に応じて医師の指示で夕食前、夕方の服薬前、入浴前、飲酒前にも測定します。測定した条件も記録してください。
  • 背もたれのある椅子に座り、足を組まず、1〜2分静かに休みます。腕を支え、カフを心臓の高さに合わせ、測定中は話さないようにします。
  • 1回の機会に原則2回測定し、その平均で評価します。2回の間隔は約1分を目安にし、血圧計の説明書にも従ってください。
  • 朝と夜の値を分けて、できれば7日間、少なくとも5日間記録して診察にお持ちください。低い値が出るまで何度も測り直したり、高かった値を記録から外したりしないでください。[5][6][7]

記録には、日付、時間、上と下の血圧、脈拍を残し、飲み忘れ、症状、睡眠の変化も書いておくと役立ちます。測定が強い不安につながる場合は、一人で無理をせず測る頻度を相談してください。家庭で測った値を理由に、降圧薬を自分で増やす、減らす、やめることは避けましょう。[5]

高血圧症の原因と二次性高血圧

高血圧の多くは、体質、加齢、塩分の多い食事、肥満、飲酒、運動不足などが重なって起こる本態性高血圧です。一方、原因となる病気や薬の影響を特定できるものを二次性高血圧と呼びます。若い年齢での発症、急な悪化、非常に高い値、薬を複数使っても下がりにくい場合などには、背景にある原因を調べることが重要です。[8]

主な原因には、慢性腎臓病などの腎臓の病気、腎臓へ血液を送る動脈が狭くなる腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症、甲状腺の機能異常、クッシング症候群、褐色細胞腫・パラガングリオーマなどがあります。原発性アルドステロン症は、副腎で作られるホルモンが過剰になる病気で、血液のカリウムが低いときだけでなく、正常でも起こります。原因に応じた薬や専門的な治療が必要になるため、普通の降圧薬を増やす前に確認する価値があります。[8][9]

薬や健康食品も見落とせません。痛み止めの一部であるNSAIDs、ステロイド、鼻づまりの薬、ホルモン製剤などが血圧に影響することがあります。甘草を含む漢方薬や製品の取り過ぎでは、偽アルドステロン症によって血圧上昇や低カリウム血症が起こることがあります。処方薬に加え、市販薬、漢方、サプリメントも診察でお知らせください。必要な薬を自己判断で中止せず、医師と調整します。[8][9][10]

睡眠時無呼吸(OSA)と高血圧

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、眠っている間にのどの空気の通り道が狭くなり、呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。高血圧に関係する重要な二次性の要因で、特に治療抵抗性高血圧の方では高い頻度で認められます。肥満や年齢など共通する背景もあるため、高血圧があるだけでOSAと診断したり、血圧上昇の原因をすべてOSAと決めたりはできません。[8][11]

呼吸の乱れによって酸素が繰り返し低下し、眠りが細かく中断されると、体を緊張させる交感神経が働き、血圧や心拍が上がりやすくなります。睡眠中の血圧が十分下がらない、朝の血圧が高いといったパターンも問題になります。診察室の測定だけでは分からないことがあり、家庭血圧や、必要に応じて24時間血圧測定で確認します。[8][11]

大きないびき、ご家族に指摘される呼吸停止、起床時の頭痛、日中の眠気、夜間の頻尿などがある方はご相談ください。眠気が目立たない方や、やせている方にもOSAはあります。症状を確認したうえで、簡易睡眠検査や精密PSGの必要性を判断します。高血圧と睡眠中の呼吸を一緒に評価することが、治療を見直すきっかけになります。[11]

薬剤抵抗性高血圧ではOSAは何%?

利尿薬を含む3種類の降圧薬を、適切な量で使っても目標に届かない状態などを治療抵抗性高血圧と呼びます。4種類以上の薬でようやく管理できている方も、この評価の対象になります。ただし、飲み忘れ、測定方法、診察室だけで高い白衣効果などでも下がりにくく見えるため、まず服薬と家庭血圧を確認します。[8]

OSAの頻度は対象者や検査基準によって異なります。米国心臓協会の2018年の科学声明では、治療抵抗性高血圧の患者集団でOSAが70〜90%と高頻度に認められると整理されています。また、2001年のLoganらの研究では、薬剤抵抗性高血圧41人を精密睡眠検査で調べ、83%にOSAが認められました。この研究のOSAの判定はAHIが10回/時間以上です。「日本の患者さん全員で83%」や「すべての高血圧の83%」を意味する数字ではありません。[8][12]

OSAに対するCPAPは、睡眠中に空気の圧力で気道を保つ治療です。血圧にも改善が期待されますが、降圧薬の代わりではありません。OSAと治療抵抗性高血圧のある194人を対象としたHIPARCO試験では、通常の降圧薬を続けながらCPAPを12週間使用した群で、対照群より24時間平均血圧が3.1mmHg低下しました。個人差があり、24時間の上の血圧だけの差は統計学的に有意ではありませんでした。CPAPを始めた後も、血圧、服薬、マスクの使い心地や使用状況を確認していきます。[13]

高血圧症の治療と継続管理

治療では、生活習慣の見直しと必要な薬を組み合わせます。減塩は食塩1日6g未満を目標に、汁物を飲み干さない、加工食品や調味料の量を見直すなど、続けやすい方法から始めます。体重管理、禁煙、飲酒量の見直し、無理のない運動、睡眠の確保も大切です。心臓や腎臓の病気がある場合は、運動量、水分、食事の内容を個別に相談してください。[1][4]

診察では家庭血圧の記録と、健診結果、使用中の薬を確認し、必要に応じて血液・尿検査、心電図などで原因や臓器への影響を調べます。腎機能、カリウム、持病などに合わせて降圧薬を選び、効果と副作用を確認します。二次性高血圧が疑われるときは、必要な専門検査や連携も検討します。血圧が下がってきた場合も、治療が効いている可能性があるため、自分で薬をやめず記録をもとにご相談ください。[5][8]

早めの相談・救急対応が必要なとき

健診で血圧が高いと言われた方、家庭で高い値が続く方、薬を使っても下がりにくい方は受診してください。血圧手帳や血圧計の記録、薬の一覧があると診療の助けになります。いびきや呼吸停止について、ご家族が気づいたこともお伝えください。

突然の強い胸痛、息苦しさ、片側の手足の麻痺、言葉が出にくい、意識の異常などがあるときは、通常の予約を待たず119番などの救急対応が必要です。安静にして測り直しても上が180mmHg以上、または下が120mmHg以上など非常に高い値が続く場合は、症状がなくても速やかに医療機関へ相談してください。数値だけで自己判断して降圧薬を追加しないでください。[14]

参考資料

資料確認日:2026年10月5日

  1. 日本高血圧学会「高血圧の10のファクト」
  2. 日本高血圧学会:高血圧の診断基準の案内
  3. 日本高血圧学会「高血圧の日」JSH2025の目標・正常値
  4. 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」公式案内
  5. JSH2025原著・家庭血圧測定の条件
  6. 日本高血圧学会:家庭で血圧を測定しましょう
  7. 日本高血圧学会:血圧朝活アクションプラン
  8. Carey RM, et al. AHA resistant hypertension scientific statement, 2018.
  9. JSH2025原著 第15章:二次性高血圧(腎臓・内分泌・睡眠時無呼吸・薬剤等)
  10. PMDA:甘草を含む製剤の添付文書・偽アルドステロン症の注意
  11. AHA Scientific Statement, Obstructive Sleep Apnea and Cardiovascular Disease, 2021.
  12. Logan AG, et al. J Hypertens. 2001;19:2271–2277.
  13. Martínez-García MA, et al. HIPARCO trial, JAMA 2013.
  14. American Heart Association / American Stroke Association:高血圧緊急時の対応(2025年8月更新。日本の救急番号は119)
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