呼吸器内科

肺サルコイドーシス

肺の状態と全身の合併症を確認し、一人ひとりに合った診療を

呼吸器内科の受診案内

肺の状態と全身の合併症を確認し、一人ひとりに合った診療を

咳が長引く、階段で息切れがする、健康診断で胸部の影やリンパ節の腫れを指摘された。その背景に、サルコイドーシスが見つかることがあります。サルコイドーシスは肺だけでなく、眼や心臓、皮膚などにも病変が生じる病気です。症状や経過には個人差が大きく、自然に落ち着く方がいる一方で、臓器の働きを守るために治療が必要になる方もいます。当院では呼吸器内科専門医が診察を行い、循環器内科などの関連診療科や専門医療機関と連携し、肺と全身の状態を継続的に確認していきます。

肺の肉芽腫と、心臓・眼・腎臓・皮膚の病変を示すサルコイドーシスの説明図。
サルコイドーシスでは肺以外にも病変が生じることがあります。症状や経過に合わせ、関連する診療科と連携して確認します。 図を拡大する(新しいタブ)

サルコイドーシスとは

免疫を担う細胞が集まり、「肉芽腫(にくげしゅ)」という小さなかたまりをつくる病気です。肺や、肺の入り口にある肺門リンパ節、左右の肺の間にある縦隔リンパ節によく病変がみられます。肉芽腫はがんそのものではなく、サルコイドーシスが周囲の人にうつることもありません。ただし、似た画像所見を示す感染症や腫瘍があるため、検査で区別することが大切です。

発症には免疫反応の異常などが関係すると考えられていますが、原因は十分に解明されていません。「肺サルコイドーシス」と診断された場合も、肺だけの病気と決めつけず、ほかの臓器に異常がないかを調べます。[1]

どのような症状がみられますか

肺の症状としては、痰の少ない咳、体を動かしたときの息切れ、胸の違和感などがあります。自覚症状がほとんどなく、健診の胸部エックス線検査をきっかけに診断されることもあります。また、疲れやすさ、発熱、体重減少、関節や筋肉の痛みなど、肺以外の症状が受診のきっかけになる場合もあります。画像上の異常の程度と、つらさが必ずしも一致するわけではありません。以前より歩ける距離が短くなった、仕事や家事の途中で休むことが増えたなど、日常生活の変化も診察時にお伝えください。[2]

診断と、経過を確認するための検査

胸部エックス線やCTでリンパ節と肺の状態を確認し、呼吸機能検査で肺の容量や酸素を取り込む働きなどを評価します。血液検査では炎症や臓器機能、カルシウムなどを調べ、ACEや可溶性IL-2受容体などを補助的に用いることがあります。ただし、特定の血液検査の数値だけで診断はできません。

確定診断やほかの病気との区別のため、気管支鏡などで組織を採取する生検が必要になる場合があります。検査の必要性と負担を検討し、必要な精密検査は専門医療機関と連携して進めます。また、診断時には肺の検査だけでなく、心電図や眼科の診察などを組み合わせて全身を評価します。すべての検査を毎回行うのではなく、症状やこれまでの結果に応じて内容と間隔を調整します。[1][3]

注意したい肺の合併症

炎症が長く続く一部の方では、肺の組織に傷あとが残って硬くなる「肺線維症」が起こります。肺が広がりにくくなったり、酸素を取り込みにくくなったりして、息切れや低酸素血症につながることがあります。必要に応じて酸素療法や呼吸リハビリテーションも検討します。

また、肺の血管にかかる圧力が高くなる「肺高血圧症」を合併する場合があります。肺の線維化や低酸素、血管の病変、心臓の病変など複数の原因が関係するため、原因を見極めた治療が必要です。息切れが増えたときは、肺の炎症の悪化だけでなく、心臓の働きや感染症なども含めて評価します。[4][5]

心臓の合併症:循環器内科との連携が重要です

心臓に病変ができる「心臓サルコイドーシス」は、特に注意が必要な合併症です。心臓を動かす電気信号の通り道が障害されると、脈が極端に遅くなる房室ブロックなどが起こります。また、心室頻拍などの重い不整脈や、心臓の筋肉の働きが低下する心不全につながる場合があります。

動悸、脈の乱れ、めまい、失神、足のむくみ、横になると苦しいといった症状は、心臓病変の手がかりです。肺の症状が軽くても、心臓の異常がないとは限りません。心電図や心エコーを基本に、必要に応じて長時間の心電図記録、心臓MRI、FDG-PETなどの専門的検査を検討します。

当院では循環器内科と連携し、不整脈や心不全の有無を評価しながら経過を管理します。ペースメーカーや植込み型除細動器、専門的な心不全治療などが必要な場合には、対応できる医療機関へ速やかにつなぎます。[6]

眼・腎臓・皮膚などの合併症

眼では「ぶどう膜炎」などの炎症が起こり、かすみ、まぶしさ、充血、飛蚊症などが現れます。炎症やその治療に関連して眼圧の上昇や白内障などが問題になることもあり、視力を守るためには眼科との連携が欠かせません。自覚症状が少ない眼病変もあるため、眼科での評価を受け、診察間隔は担当医と相談します。[1][2]

カルシウムの代謝に異常が起こり、血液や尿のカルシウムが増えることがあります。尿路結石や腎機能低下につながるほか、腎臓自体に炎症が生じることもあります。血液・尿検査で確認し、異常があれば腎臓内科などと連携します。カルシウムやビタミンDのサプリメントは、自己判断で開始せず相談してください。[9]

皮膚の赤い発疹やしこり、古い傷あとが盛り上がる変化、顔面の動かしにくさや手足のしびれなどの神経症状がみられる場合もあります。肝臓や脾臓、筋肉などに病変ができることもあり、症状や検査に応じて皮膚科、脳神経内科、消化器内科などに相談します。これらの合併症がすべての患者さんに起こるわけではありません。[2][7]

治療は、症状と臓器への影響をみて決めます

診断された方全員に、すぐ薬物治療が必要なわけではありません。症状が軽く、臓器の働きが保たれ、悪化する兆候が乏しい場合には、定期検査をしながら経過をみます。一方、肺機能の低下や、心臓・眼・神経などの重要な臓器への影響がある場合には、症状が少なくても治療を検討します。

治療では副腎皮質ステロイドを中心に、病状に応じて免疫反応を調整する薬を検討します。薬の種類や使い方は、病変のある臓器、重症度、副作用、国内での適応を踏まえて専門医が判断します。ステロイドなどを使用する場合には、感染症、血糖・血圧の上昇、骨粗しょう症、眼の合併症などにも配慮します。処方薬は自己判断で中止・増減せず、気になる症状を相談してください。[5][7]

日常生活と受診の目安

禁煙と受動喫煙の回避を心がけ、体調に合った活動を続けましょう。強い疲労や息切れがあるときは、無理な運動をせず、活動量について医師に相談してください。症状が落ち着いていても、病気の再燃や新しい臓器病変を確認するための通院は大切です。[8]

失神、強い胸痛、急な強い息苦しさ、意識の異常があるときは、通常の予約を待たず救急受診を検討し、重い症状では119番へ連絡してください。急な視力低下や見え方の変化も、早急な眼科受診が必要です。

当院では、肺の画像や検査数値だけでなく、心臓・眼・腎臓などへの影響と日常生活の困りごとを確認します。各診療科と情報を共有し、必要な専門診療につなぎながら、長期的な健康管理を支えます。

他院からのご紹介・通院先の変更をご希望の方へ

当院では、他の医療機関でサルコイドーシスと診断された方のご紹介や、転居などに伴う通院先の変更、継続診療のご相談も受け付けています。これまでの治療経過や検査結果を確認し、現在の主治医・紹介元の医療機関と情報を共有しながら、病状に合った診療を検討します。

受診の際は、可能であれば紹介状(診療情報提供書)、画像検査のデータや検査結果、お薬手帳をご用意ください。専門施設での検査・治療が引き続き必要な場合には、紹介元や専門医療機関との連携を保ち、当院での日常的な健康管理と組み合わせて支えます。治療を途切れさせないため、現在の処方薬は自己判断で中止せず、受診前にお電話でご相談ください。

予約・お問い合わせ

参考資料
  1. 日本呼吸器学会「サルコイドーシス」
  2. NHLBI「Sarcoidosis — Symptoms」
  3. NHLBI「Sarcoidosis — Diagnosis」
  4. NHLBI「What Is Sarcoidosis?」
  5. NHLBI「Sarcoidosis — Treatment」
  6. 日本循環器学会「心臓サルコイドーシスの診療ガイドライン」
  7. 難病情報センター「サルコイドーシス」難病情報センター「サルコイドーシス」(関連解説)
  8. NHLBI「Sarcoidosis — Living With」
  9. 米国胸部学会「Diagnosis and Detection of Sarcoidosis」
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