目・口の乾燥から間質性肺炎まで、全身を見据えた診療
シェーグレン症候群は、目や口の乾燥を主な症状とする自己免疫疾患です。肺、腎臓、関節、神経などに影響することもあり、乾燥症状への対応と全身の合併症の確認を並行して行うことが大切です。おがわクリニックでは、膠原病内科の専門医師と呼吸器内科専門医が連携して診察を行います。特に間質性肺炎については、咳や息切れ、検査結果の変化を丁寧に確認し、必要に応じて循環器内科や専門医療機関とも協力しながら、継続的な管理につなげます。

シェーグレン症候群とは
本来、体を守る免疫の働きが自分自身の組織に向かい、涙をつくる涙腺や唾液をつくる唾液腺などに炎症が起こる病気です。単独で発症する場合と、関節リウマチや全身性強皮症など、ほかの膠原病とともにみられる場合があります。症状の組み合わせや程度は一人ひとり異なり、乾燥症状が軽くても全身の病変に注意が必要なことがあります。[1]
このような症状はご相談ください
目がごろごろする、しょぼしょぼする、口が渇いて会話がしづらい、乾いた食べ物を飲み込みにくいといった症状が代表的です。虫歯が増える、耳の前や顎の下が腫れる、関節が痛む、疲れやすいなどの変化を伴う場合もあります。長引く咳や階段での息切れがある方は、乾燥や年齢のせいと決めつけず、お伝えください。診察では、いつから何に困っているか、日常生活にどの程度影響しているかを確認します。[1,2]
診断と全身の状態の確認
問診・診察に加え、抗SS-A/Ro抗体などの血液検査、涙や唾液の分泌を調べる検査を組み合わせて判断します。必要に応じて、眼科や歯科・口腔外科などと連携し、唾液腺の組織検査を検討します。抗体が陽性という理由だけで診断が決まるわけではなく、陰性でも否定しきれません。薬の影響など、乾燥を起こす別の原因も確認します。診断後も血球数、腎機能、尿検査などを病状に応じて行い、目立つ症状のない臓器障害にも気を配ります。[2,3]
特に注意したい合併症:間質性肺炎
肺の中には、酸素を取り込む小さな袋である「肺胞」があります。間質性肺炎は、肺胞の壁や周囲の組織に炎症や線維化が生じる病気です。線維化とは組織が硬くなる変化で、進行すると肺が広がりにくくなり、酸素を血液に取り込む働きが低下します。シェーグレン症候群に伴う場合は、自己免疫の異常に関連する肺の病変として評価します。細菌感染による肺炎とは成り立ちが異なり、抗菌薬だけで治療する病気ではありません。[4]
肺病変には複数のタイプがあり、非特異的間質性肺炎(NSIP)や、肺に袋状の空間である嚢胞を伴うことのあるリンパ球性間質性肺炎(LIP)などが知られています。病型によって炎症と線維化の程度、経過、治療への反応が異なるため、「間質性肺炎」という名前だけで一律に判断しません。すべての患者さんに起こるわけではなく、見つかっても直ちに重症化するとは限りません。[4]
間質性肺炎の症状と、見逃したくない変化
痰の少ない咳が続く、坂道や階段で息が切れる、以前と同じ距離を歩くのがつらいといった変化が手がかりになります。一方、初期には自覚症状が乏しいこともあります。また、呼吸器症状から検査を進め、後にシェーグレン症候群が判明する場合もあります。[4,5]
咳は間質性肺炎以外にも、気道の乾燥、気管支の病変、喘息、胃食道逆流、感染症などで起こります。息切れには心臓の病気などが関係することもあるため、症状をすべてシェーグレン症候群に結びつけず、原因を整理して診療します。[5]
肺の評価に用いる検査と経過観察
間質性肺炎が疑われる場合は、胸部の高分解能CT(HRCT)で肺の変化を詳しく調べ、呼吸機能検査で肺活量などを確認します。必要に応じて、肺から血液へガスが移る能力を調べる「肺拡散能検査(DLCO)」も行います。これは通常の肺活量などを測るスパイロメトリーとは別の、専用の測定機器を用いる呼吸機能検査です。必要な場合は、検査に対応する専門医療機関と連携して評価します。胸部レントゲンだけでは、早期の変化を捉えきれないことがあります。検査は症状や診察所見、合併リスクに応じて選択します。[6]
間質性肺炎と診断された後は、症状、呼吸機能、必要に応じたCT、安静時や歩行時の酸素の状態などを比較します。単回の結果だけでなく、前回からの変化が判断の助けになります。検査間隔は病状や進行の速さによって調整し、全員に同じ頻度のCTを繰り返すわけではありません。専門的な呼吸機能検査や追加検査が必要な場合は、対応できる医療機関と連携します。[6]
間質性肺炎の治療:炎症と線維化に応じた判断
症状が軽く、肺機能や画像が安定している場合は、定期的に評価しながら経過を見ることがあります。息切れが生活に影響している場合や肺機能の低下が進む場合には、炎症の程度などを踏まえてステロイドや免疫抑制薬による治療を検討します。薬の種類や量は、肺以外の病変、年齢、感染症のリスクなども考慮して決めます。[5,7]
治療を行っても線維化が進む一部の病状では、抗線維化薬が選択肢になることがあります。ただし、シェーグレン症候群に伴う間質性肺炎の全員に最初から用いる薬ではありません。適応や期待できる効果、副作用を専門医療機関と検討します。酸素が不足する場合には酸素療法、体力低下には状態に合った呼吸リハビリテーションなどを組み合わせます。[5,7]
治療中は感染症や薬の副作用にも注意が必要です。調子がよいからと自己判断で薬を減らしたり中止したりせず、気になる変化を主治医にお伝えください。禁煙、無理のない活動、栄養の維持、病状に応じた予防接種の相談も、肺の健康を支える取り組みです。[5]
息苦しさが急に強くなったとき
数日で息切れが悪化する、発熱とともに咳が増えるなどの場合は、肺病変の急な悪化のほか、感染症、薬による肺障害、心不全なども考え、早めに医療機関へ連絡してください。安静にしていても強く息苦しい、会話が難しい、唇の色が悪い、意識がぼんやりするときは、通常の予約日を待たず救急受診が必要です。重い症状では119番を利用してください。
肺以外の合併症も確認します
目・口:涙や唾液が少なくなると、目の表面の傷、虫歯、歯周病、口腔カンジダ症などにつながることがあります。眼科での点眼治療や歯科での定期管理、口腔保湿などを組み合わせます。[2]
腎臓:尿細管間質性腎炎や、体の酸とアルカリの調節が乱れる尿細管性アシドーシスを伴うことがあります。低カリウム血症による筋力低下などにも注意し、血液・尿検査で確認します。[3]
関節・神経・皮膚:関節痛や腫れ、手足のしびれ、感覚の変化、皮膚の紫斑などがみられることがあります。症状が続く場合には、神経や血管などへの影響を評価し、必要な診療科につなげます。[3]
リンパ節・唾液腺:一部の患者さんでは悪性リンパ腫を合併することがあります。唾液腺やリンパ節の腫れが続く、明らかな体重減少や原因不明の発熱がある場合にはご相談ください。腫れがあるだけでリンパ腫と決まるわけではありませんが、変化を確かめることが大切です。[2,5]
当院の診療と、他院からの受け入れについて
当院では、膠原病内科の専門医師が全身の状態を確認し、間質性肺炎などの肺病変については呼吸器内科専門医と連携して管理します。息切れやむくみなどから心臓の病気や肺高血圧症が疑われる場合には、循環器内科とも協力して評価します。眼科、歯科・口腔外科、腎臓内科などの診療が必要な場合は、適切な医療機関につなぎます。気管支鏡検査などの精密検査や入院治療は、専門医療機関と連携して対応します。
他院でシェーグレン症候群や関連する間質性肺炎と診断された方のご紹介、転居などに伴う通院先の変更、継続診療のご相談も受け付けています。可能であれば紹介状、過去のCTなどの画像データ、呼吸機能検査の結果、お薬手帳をご用意ください。紹介元の主治医と治療経過を共有し、専門施設での診療を続けながら、身近な当院で日常的な健康管理を行う形も検討します。受診先の変更によって治療が途切れないよう、事前にお電話でご相談ください。
予約・お問い合わせ
参考資料
- 難病情報センター:シェーグレン症候群
- 国立病院機構 栃木医療センター:シェーグレン症候群
- 東京大学医学部附属病院 アレルギー・リウマチ内科:シェーグレン症候群
- Sjögren’s Foundation: Interstitial Lung Disease and Sjögren’s Disease
- Consensus Guidelines for Evaluation and Management of Pulmonary Disease in Sjögren’s(CHEST, 2021)
- 2023 ACR/CHEST ILD screening and monitoring guideline(2024年刊行)
- 2023 ACR/CHEST ILD treatment guideline(2024年刊行)





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